70 / 155
03-15.
……酸っぱい。
不快な酸味ではない。
肉料理の後に出てくる口直しの果物に似た酸味だ。
……甘くなってきた。
何度も噛んでいると徐々に甘みが出てくる不思議な果実だ。見た目はベリー系のようだったが、味は柑橘系に近く、妙に歯ごたえが良い。
「どうだ?」
ジェイドはレオナルドの反応が気になるだろう。
悪戯が成功した子どものような顔でレオナルドの返事を待つ。
「美味しいな」
「え? 本当か?」
「俺は好きな味だ。好みがわかれるとは思うけど」
レオナルドの感想を聞き、ジェイドは袋に手を入れる。
それから黄色の果実を探して摘み、覚悟を決めたような顔をして、口の中に入れた。
先ほどと同じように、酸っぱいということが隠しきれていない妙な表情を浮かべながら飲み込んだ。
「酸っぱい」
ジェイドは騙されたかのような目を向ける。
「好みの問題だろう」
レオナルドはその視線を気にすることはなく、もう一粒、黄色の果実を摘まんで口の中に入れた。
「……黄色を分けてやるよ」
「いらないなら受け取る」
「助かるよ。レオナルドは頼りになるな」
ジェイドは遠慮なく黄色の果実を摘まんでレオナルドの袋の中に入れる。
……直接、入れられるのではないかと警戒したんだが。
先週の出来事を考えると人目があるところでも暴走しかねない。
レオナルドがそのようなことを考えているとは知らないまま、ジェイドは袋の中に入っていた大量の黄色の果実を移動させている。
「そういえば、この果実の名前を見ていなかったな」
ジェイドは不意に思い出したのだろう。
「ふふっ、バカだな。これがイキシアの名物じゃないか」
「マジか。これが名物だったのかよ」
袋の中に苦手な黄色の果実が入っていないのか、念入りに確認しながら言った言葉に対してレオナルドは思わず笑ってしまった。
ともだちにシェアしよう!