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03-25.
……ジェームズに聞いたのだろうか。
用意されたのは日頃から好んでいる衣服店で作られているものだった。
……こだわってはいないのだが。
身に付けている洋服を脱ぎ、用意された衣類を身に付ける。
……変だな。
違和感の一つも存在しない。着心地は良い。
……どうして正確な大きさを知っているんだ?
サイズは大きくもなく小さくもない。――まるでレオナルドが着る為だけに作られた洋服のように感じてしまう。
……普段は身に付けない色だ。
客観的に見ても、よく似合っている。
ジェイドの眼の色と同じ青色を基調とした洋服ではあるが、レオナルドが身に付けても何も違和感がない。それどころか、レオナルドの意見を尊重してデザイナーが新たに作り上げたと言われても納得ができる仕上がりだ。
「ジェイド」
レオナルドは扉に向かって声をかける。
すると、呼ばれるのを待っていたというかのように扉が開けられて、ジェイドが近づいてくる。
「似合っている」
ジェイドは笑顔で告げる。
その言葉には裏はないだろう。本音だと判断しても問題はなさそうだ。
「青が似合うと思っていたんだ」
納得のできる仕上がりだったのだろう。
ジェイドはレオナルドの傍に立ち、上から下まで念入りに確認した。
「おい。そんなに――」
「ゆっくり回って見せてくれ」
レオナルドは抗議の声を上げようとしたが、ジェイドの真剣な声にかき消された。笑顔は保っているものの、目は真剣そのものである。
それこそ、緊急事態が起きた時の仕事中のような視線を向けられると反抗するのが悪いことのように感じてしまう。
「わ、わかったから。少し離れてくれ」
レオナルドの言葉に対し、ジェイドは数歩下がる。
……何がしたいんだ。こいつは。
一夜を共にしたとはいえ、レオナルドの身体は綺麗なままである。
婚約直前には平然と性行為に近いことを強要してきた相手とは思えない。
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