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03-28.
「……そうか」
ジェイドは叱られた子犬のように落ち込んだ。
それに対して可愛いとは思えない。
「俺はあまり手先が器用な方ではなくてな」
……ん?
話の流れが繋がらない。
レオナルドはジェイドの言葉を黙って聞くことにしたが、終始、首を傾げたままだ。
「母上のように器用ならば良かったんだが。残念なことに、剣術や魔法に才能が偏ってしまったらしい」
……騎士としては十分すぎるほどの実力者ではなかったか?
王族の近衛騎士を務めている第二騎士団の副団長だ。
通常ならば二十代で昇格できるような立場ではない。それを実力で掴んだのだから誇るべきことだろう。けっして、肩を落として言う言葉ではない。
「これだけは理解をしてほしい」
ジェイドは縋りつくような声を上げた。
「既製品を作らせるから測るのは俺にさせてくれ」
「いや、それが嫌だと言っているんだが」
「そんなことを言わないでくれ。本当は、俺が作った服だけを着ていてほしいんだが、それは我慢するから、レオナルドも受け入れてほしい」
……何を言っているんだ?
レオナルドはジェイドの言いたいことが理解できなかった。
「あのな。服は既製品で十分だ。既製品と言ってもオーダーメイドだろ? それ以上のことは望まないから、サイズを把握しようとしないでほしい」
レオナルドは戸惑ったように声をかける。
言い聞かせることができなければ、今後もレオナルドの体格を自分で測ろうとしてくることだろう。
……まさか、先週、膝に座らせたのは。
興奮をしていたわりには強引なことを続けず、あっさりと手を引いたことを思い出す。射精しないと辛いだろうとそれらしいことを口にしながら、身体中をさりげなく触っていた。
恐らく、その時にサイズを測っていたのだろう。
「それは結婚をする相手にすることではないと思う」
同意の上でするのならば構わないという人もいるだろう。
しかし、レオナルドは同意をするつもりもなく、嫌なものは嫌だった。
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