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03-29.
「……嫌なのか」
ジェイドは少しずつ距離を縮める。
それに対してレオナルドは眉を潜めた。
「俺が嫌いか?」
……極端な奴だな。
レオナルドとしては、身体のサイズを把握しないでほしいと当然の主張をしただけなのだが、ジェイドには好意を拒否されたように感じられたのだろう。
「強引なところは嫌いだ」
レオナルドは目を反らす。
「変態なところも嫌い」
そういうことだけがしたいのならば、命令をすればいい。
伯爵家を脅迫し続ければレオナルドは逆らえない。
「それなのに俺の言葉を聞こうとしてくれるところは、嫌いじゃない」
婚約を結んだ以降、脅迫は終わった。
アルフレッドの言い分では今も脅迫を受け続けているかのようにも聞こえたが、あの後、調べてみれば婚約が成立した以降は脅迫そのものがなかったことになっていた。
泣きついてきたのは、レオナルドの結婚を反対しようとしたアルフレッドの咄嗟の判断だったのだろう。脅迫をされていると訴えれば、婚約が取りやめになるのではないのかと浅はかなことを考えたアルフレッドのことを思う。
可愛い弟だ。
原因が自分自身の行動にあったのだと受け入れらないような子どもだ。
「やり方は、まあ、貴族らしいんじゃないか」
貴族社会は互いの足を引っ張り合うのが常である。
「方法はどうであれ。伯爵家から助けてくれたことは感謝している」
レオナルドにとって伯爵邸は檻のようなものだ。
小鳥のように飼いならされる日々を望んでいたわけではない。
「色々と考えると複雑なところだな。嫌いとは言い切れない。嫌いなところもあるが、好感を抱いているところも多少はある」
手紙が来るたびに浮かれていたことは口にしない。
そこまで話したところでレオナルドはジェイドに視線を向けた。距離を縮めようとした姿勢のまま、動きが止まっている。
顔や耳だけではなく、首元まで赤く染まっている。
目も見開かれている。
……言い過ぎただろうか。
全てを貶したわけではない。しかし、動きが止まった様子を見ると不安になる。
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