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03-30.
「ジェイ――」
「俺も大好きだ!!」
「――ぐっ」
レオナルドが呼びかけようとした時だった。
ジェイドは勢いよくレオナルドを抱き締める。目にも止まらない速さであっという間に距離を縮められてしまい、レオナルドはジェイドの腕の中だ。
「好き。大好き。愛している」
ジェイドは幸せで仕方がないというかのように愛を囁く。
「もう離してやらないからな」
そもそも、手放すつもりなどないだろう。
「一生、幸せにしてみせるからな」
愛の言葉を囁き続ける。
ジェイドはレオナルドが苦しそうな声をあげていることに気付いていないのだろうか。窒息はしないように手加減されてはいるものの、逃げ出すことは出来ない力は込められている。絶妙な力加減だった。
……この怪力野郎!!
そのまま締め上げられるのではないかと心配になるくらいの勢いだ。
うっすらと目を開けるものの、服しか見えない。なんとか身体を動かし、頭をジェイドの肩に乗せる。それだけで呼吸が多少楽になる。
……いつか、締め上げられそうだ。
体格差を理解してほしいと心の底から思う。
姿勢を変えることに対しては抵抗をしないのにもかかわらず、ジェイドはレオナルドを抱き締めたまま、離れようとしなかった。
「わかった。わかった」
レオナルドは適当な返事をする。
「一緒にいてやるから、今は離してくれ。締め上げられそうだ」
結婚をすることは避けられないのだ。
今更、手放されたところで戻るのは伯爵邸だ。今回のことを耳にしたセドリックの暴走も免れられず、伯爵領内ですらも出歩くことを禁じられることになるだろう。
「俺も努力はしてみるから」
それを考えるとレオナルドはジェイドの愛を受け入れるしかなかった。
「幸せにしてくれると言うのならば、俺も、ジェイドを幸せにできるように努めてみよう」
レオナルドの言葉は、今はまだ心から言った言葉ではない。
それでも、心のどこかではいつの日かそれが本当になれば良いと思っている。
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