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03-32.

 外の世界を思い出してしまえば、戻れなくなる。 「その言葉を信じるからな」  レオナルドは笑った。 「任せとけ」  ジェイドはゆっくりと腕の中からレオナルドを解放する。  それからレオナルドの頬に口付けをする。 「俺の可愛いレオナルド。朝食の後にどこかに行きたいことはあるか?」  問いかけられて首を傾げる。  ……今日も遊べるのか?  国防任務に携わっている第五騎士団ならば、忙しない日々を過ごすことになるだろうが、王族の警備が中心となる第二騎士団はこの時期は多忙ではない。  王族主催のパーティや建国祭が近づくとまともに休暇を取れないほどの多忙になるが、今は連休を取ることができるほどの余裕があるのだろう。  ……聞かれても行きたいところなど思いつかないな。  考えたこともなかった。  行き先を決める選択肢を与えられたのは初めてだった。 「わからない」  レオナルドは困ったように笑う。 「俺を外に連れ出してくれ。ジェイド」  甘えるような言葉を口にした。  それが恥ずかしかったのだろう。レオナルドはジェイドから距離を取るように立ち上がり、抱きしめられていたことで皺が寄った服装を正す。 「そんなことで良いのかよ?」  ジェイドは立ち上がる。 「やりたいことは? 今日じゃなくてもいいぞ」  それからレオナルドの耳元で囁く。  反射的に数歩下がったレオナルドを追い詰めることはせず、機嫌よく、レオナルドの返事を待っていた。  ……やりたいことか。  諦めてきたことを思い出す。  それらは後々で良いだろう。 「チューベローズ子爵家の屑野郎を再起不能にしたいとは思うが」  最優先するべきことを口にした。  レオナルドの大切な弟を傷つけたクリスを許しておけない。  先日はアルフレッドがいた為、殴りかからなかっただけである。アルフレッドがあの場にいなければ再起不能になるほどの暴行を加えていたことだろう。

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