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「レオナルドと会う機会を作る為にクリスを利用しただけだ。俺が関わったのは一回だけ。それ以外は彼奴の独断だと言っただろ?」 「……わかってる。でも、許せるような問題ではない」 「そうだろうな。レナナルドは優しいから怒ると思っていた」  ……その顔で言われると弱いのも気づいているんだろうな。  整った顔だ。  感情に合わせるように変わる表情さえも絵になる。  ……撫ぜられると、色々とどうでもよくなりそうになる。  目が合うだけで感情が高ぶり、胸が苦しくなる。  それをどうすればいいのか、レオナルドにはわからなかった。 「落ち着いたか?」  ジェイドの問いかけに対し、レオナルドは頷いた。 「レオナルドが許せないって言うなら、再起不能にしてやれるし、子爵家を追い込んでもいい。お前がそれで満足してくれるならいいからな」  ……それが元婚約者に対する言葉か?  ジェイドがクリスと婚約を結んでいた期間は五カ月間だ。それは、クリスがアルフレッドに対して性行為を強要していた時期とほとんど一致する。  ……あの屑野郎も利用されたんだろうな。  同情はしない。許すこともない。  しかし、クリスもジェイドに利用をされていただけなのだろう。  ……同情する価値もない屑野郎だが。  レオナルドを外に引っ張り出す為だけに最初から仕組まれていた婚約だったのならば、伯爵家が条件を飲み込んだからという理由だけで、侯爵家を敵に回した子爵家が没落をしていない理由はならない。 「でも、それが終わったらクリスのことを忘れろ」  髪を撫ぜていた手が離れる。 「彼奴のことなんか覚えている必要もない。なにより、彼奴に向けられている感情があることが許せない」 「……自分勝手な奴だな」 「知ってる。俺は独占欲の塊のような奴だからな」  ジェイドはレオナルドの手を握る。  恋人の手を労わるかのように優しく握り、歩き始める。 「朝食を食べるんだろ?」  二人だけの空間にいるのにもかかわらず、他人の名前が出るのが不快だったのだろう。

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