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03-35.

 それを感じさせないように気を使っているのだと強調するかのように強引に話題を変えた。 * * *  宿の朝食と昼食は賑やかだった。  伯爵邸とは異なり、大皿に盛られてくるだけの食事に呆気を取られているとジェイドに笑われた。  ……楽しかったな。  そのことを思い出しながら荷物を片付けていく。  ……初めてのことばかりだったけど。  結局、宿の外に出ることもなく、二人だけの時間をゆっくり過ごしていた。  話の話題が尽きることもなく、あっという間に楽しい時間は終わってしまうものだとレオナルドが知った時には帰らなくてはいけない時間になっていた。  それすらも惜しいと思ってしまう。 「レオナルド」  ジェイドはレオナルドを後ろから抱き締める。 「騎士団本部の近くに邸宅があるんだ。ずいぶんと使ってなかった古い建物なんだが、大急ぎで改装させている」  荷物を片付けているレオナルドの邪魔にはならないように手加減をしながらも、ジェイドは離れようとはしなかった。 「そこで一緒に暮らそうな」  問いかけではない。  ジェイドの中では一緒に暮らす計画が立てられているのだろう。 「改装工事は三日後に終わる。その日のうちに迎えに行くからな」  そして、レオナルドがそれを拒絶するはずがないと確信を得たからこそ、打ち明けたのだ。 「だから、三日間の我慢だ」 「……仕事は?」 「休暇を申請してあるから問題ない。俺の分の仕事を快く引き受けてくれた奴がいるからな」  ……職場の人間を巻き込むのは良くないと思うが。  騎士団の人間関係はよくわからない。  しかし、ジェイドが休暇を取りやすいようにしてくれた人に対して、心の中で感謝をする。 「わかった」  レオナルドは鞄を閉じる。  持ってきた荷物の確認は終わったのだろう。

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