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03-36.

「その間に引っ越しの準備をしておく」  必要なものを選択しなければならない。  ……ジェームズともお別れか。  二十年近くの付き合いがある世話係の執事を思い出す。ジェームズならば、侯爵家が許してくれるのならば着いていくと言ってくれるかもしれない。 「執事は連れてきてもいいぞ」  ジェイドはレオナルドが考えていることがわかるのだろうか。 「ジェームズと言ったか? 何回かやり取りをしたことがある。あの爺さんなら老後も侯爵家で面倒を見てやってもいい」 「……聞いてみる」 「そうしてみろ。爺さんもレオナルドから誘われた方が嬉しいだろうからな」  伯爵家に関わるものは持っていく気にはなれず、所持している伯爵家由来のものの多くは兄弟に押し付けることになるだろう。  それでも、二十年近くも傍にい続けてくれたジェームズが傍にいてくれるのならば心強い。  侯爵家に転職をする許可もトムならば許してくれるだろう。  伯爵としても、父親としても頼りのないトムではあるが、レオナルドのことを大切な息子の一人として愛してくれていることは間違いない。  それを疑ったことだけは一度もなかった。 「兄上が帰ってくる前に抜け出せたら理想的だな」  口には出して見たものの、不可能に近いだろう。  婚約者の家に嫁ぐことは珍しいことではない。成人を過ぎた者同士の婚約ならば、その日のうちに同棲をすることもある。  その事例を出せば、セドリックさえ戻ってきてなければ、問題なく抜け出せるだろう。 「帰ってきても問題ねえな」  ジェイドは笑う。 「俺が迎えに行く。セドリックに二度と邪魔はさせねえよ」  ジェイドはレオナルドの首筋に口付けをする。  所有物であると主張するかのような痕を付けたことにレオナルドは気づいていない。恐らく、伯爵邸に帰った後にジェームズかアルフレッドに指摘をされて気づくことになるだろう。

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