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「兄上が俺の為にしていたことだからな」  友人と会いたいと訴える声を聞き入れてもらえなかった。  それでも、すべてはレオナルドの為なのだと信じて実行するしかなかったセドリックが思い悩んでいたことを知っている。  ……話し合いになればいいんだが。  恐らく、話し合いにはならないだろう。  それでも、レオナルドはセドリックの言葉に従うわけにはいかない。 「あの人を騙してまで外に出ようとは思えない」  報告が終われば、セドリックはレオナルドの部屋を訪ねるだろう。  それは初めてのことではない。伯爵邸に戻ってくると毎回のようにレオナルドの部屋を訪れ、レオナルドが生きていることを確認する。  そうしなければ、セドリックは気が狂ってしまうのではないか。  そう思ってしまったのは一度だけではなかった。 「心配はいらない。ジェームズ」  レオナルドは笑う。 「保険はかけてある」  二日前、ジェイドと会った際に手紙を出していた。  宛先はセドリックの妻、シェリル・カルミアだ。  セドリックが伯爵邸に戻る際、レオナルドの味方をしてほしいと綴った手紙は極秘に届けられていることだろう。  その返事はレオナルドが期待をした通りだった。 「義姉上も協力をしてくれる。兄上は納得してはくれないだろうが、強硬手段も出られないように手筈は整えてある」  セドリックは、幼い頃から婚約を結んでいたシェリルと結婚し、海外の仕事にまで連れて行くほどの愛妻家である。  近い将来、伯爵夫人となる女性が伯爵邸で暮らしていないのは、シェリルの義兄弟になるレオナルドたちが伯爵邸に留まっているからだとレオナルドは考えていた。 「だから、心配は――」  レオナルドの声を遮るように扉が叩かれた。  返事をする間もなく、扉は開けられる。 「レオ!!」  そのまま、部屋に駆け込んできたのはセドリックだった。  今年、二十九歳になったとは思えない若々しい見た目と行動力を維持し続けるセドリックを止めようとしたものの、失敗をしたのだろう執事やメイドは申し訳なさそうに廊下で頭を下げていた。

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