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「……ごめんなさい」  その行為は間違いだと気づいていた。  監禁のような行為はしてはいけないのだと諭さなければいけないのだと頭の中では理解をしていながらも、レオナルドは一歩を踏み出せずに立ち止まった。 「悪夢から救えなくてごめんなさい」  ……本当はわかっていたのに。  セドリックはレオナルドを溺愛している。  それはレオナルドの都合の良い勘違いではないだろう。  ……俺が受け入れられなかったから。  セドリックは悪夢に魘されながら、何度も何度もレオナルドの名を呼んでいた。 「知らない間に苦しめていてごめんなさい」  ……俺がいるから兄上は悪夢を見続けていたのに。  幼い頃、七つ上の優しい兄に甘えるのが好きだった。  まだ親に甘えたい年頃だったのもあるだろう。  当時、八歳だったアルフレッドと手を繋ぎ、セドリックの寝室に潜り込むことが何度もあった。そして、甘やかしてくれる大好きな兄のセドリックが魘されているのを知ってしまった。  ……俺は逃げてしまった。  悪夢に魘されるセドリックに気付き、泣き出してしまったアルフレッドを抱えてレオナルドは逃げてしまった。 「もういなくなるから」  声が震えてしまいそうになる。 「だから、兄上は俺のことを忘れてくれよ」  驚いた顔をしているセドリックから目を反らしてしまいたくなる衝動を堪え、レオナルドはなんとか笑ってみせた。  誰から見ても無理をしているのだとわかるような痛々しい笑顔だ。 「レオ……?」  セドリックは何度も瞬きをする。  言われた言葉を理解できないのか。それとも、なぜ、レオナルドが自分自身の存在を否定するような結論に至ってしまったのか、理解できないのだろう。 「兄上が俺の為にしてくれたことはわかってる」  我慢が出来なかった。  目を反らしてしまう。 「でも、俺だって、兄上を苦しめたくないんだ」  上手く笑っている自信はなかった。

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