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01-13
「……これ、調べたの?」
セドリックは渡された紙を見て目を見開いた。
ジェイドとデートに出かける以前に調べ尽くしていた。
万が一、避妊薬として渡した魔法薬の副反応が出るといけないと言い聞かせ、医者に採取させた血液を元に分析魔法をかけた結果の一覧だ。
「それくらいしかできなかったから」
レオナルドは目を反らす。
セドリックが海外にいる間、アルフレッドの異変に気付く機会はあったはずだ。それなのにもかかわらず、事態が発覚するまで何も気づけなかった。
「気づいてやれなかったから。だから、それ以外のことをしてあげたくて」
それを後悔していた。
兄として不甲斐なく思ってしまう。
「特定はできなかった」
魔法薬の特定には至らなかったものの、使用された可能性のある材料から複数の候補を絞り出すことはできた。
「魔力の中にも、血液の中にも痕跡が残っていない。相当弱い魔法薬を使われたのか、かなり品質が悪いものだったのか。そのどちらかだとは思う」
補足をするようにレオナルドは付け加えた。
セドリックは何も言わない。視線は渡された紙に向けられたままだ。
「兄上。アルの情緒不安定は魔法薬によるものではないかもしれない。一時期的なものだとは思うが、異常な状態になっている」
何も言われないと不安になってくる。
……まずかっただろうか。
専門機関に声をかけるべきだったのだろう。
伯爵家で雇われている医者を呼ぶことには泣く泣く同意してくれたものの、外に出ることを嫌がったアルフレッドに強要することができなかった。
その為、レオナルドが分析魔法をかけて調べ上げたのだ。
「わかってる。調査はさせているよ」
セドリックも違和感を抱いていたようだ。
「侯爵家は早々に子爵家を見捨てていた。当然だと思うけどね。でも、最初から計画されていたかのようなやり方だったんだよ」
セドリックは、手紙による事後報告を受けた直後から調べていた。
隠すつもりがなかったのだろう。
脅迫を受ける元凶となったクリスの素性が明らかになった時のことを思い出したのか。セドリックは忌々しいと言いたげな表情を浮かべた。
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