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「僕からアルに話をしてみるよ。だから、レオは子爵家と関わりを持ってはいけないよ」 「なぜ? 俺だってアルの為に――」 「これは伯爵家の問題だから。嫁に行くなら、レオは関わるべきじゃない。立場が変わるんだから当然のことだよ」  セドリックの言葉に言い返すことはできなかった。  子爵家に圧力をかけるのならば伯爵家だけでも充分だろう。 「これはね。大事な弟を守りたいからの忠告だよ」 「……わかった」  聞き出そうとすればセドリックの機嫌を損ねてしまうだろう。  それを恐れたかのようにレオナルドは頷いた。 「良い子だね」  セドリックの表情は変わらない。  物わかりの良い弟だから愛しているわけではない。ただ危険に晒される可能性を限りなく低くしたいからこその忠告だった。  ……吐き気がする。  良い子だと褒められたいわけではない。  言い付けられたことを従うだけの十年間は悪夢のような日々だった。  ……早く迎えに来てくれよ。  自力では外に出られない。  鳥籠の中に押し込められ続けられるような日々が続くのも、その日々が悪い方向へと転がり始めるのも恐ろしい。  強気な言葉を口にしながらも、何を考えているのかわからないセドリックに対して抱き続けた恐怖心は簡単には消えてくれないだろう。 「レオ」  セドリックは紙を握りしめたままだ。 「分析魔法は誰に教わったの?」 「独学で身に付けた」 「他には? 家庭教師に教わっていないようなものを身に付けてない?」  セドリックの声が震えていた。 「隠さずに教えてよ」  怯えているようにも見える。 「危険なことに手を出してしまっているんじゃないよね?」  その声は悪夢に魘されていたセドリックを見てしまった時のことを思い出させるものだった。セドリックの指示により監禁されている現実から逃れようとするかのように始めた研究の数々は常識では考えられないものばかりだ。

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