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「禁じられているものには手を出していない」  レオナルドも危険を冒すような研究だと自覚をしていた。 「複数の魔方陣を同時に発動させられる。それと、伯爵領にかけた防護魔方陣の強化に役に立つと思って独自開発をしたのが四つほどある」  法律に引っかかるわけではない。  その研究は咎められるようなものではない。  それでも使い方を誤れば大惨事を産むような研究も含まれていた。 「成功したものは国に報告をしてある。その研究を独自に続けるように許可も得ているんだ。だから、心配しなくてもいい」  研究職が向いているのだろう。  歴史に名を遺す可能性すら秘めている研究だ。完成しているものは王国の規定に従い、王室や騎士団などに報告をされている。  レオナルドが独自開発を続ける技術が軍事的に利用されていなかったのは、開発者であるレオナルドが誰もが知る引きこもりだったからである。 「そっか」  セドリックは困ったように笑った。 「やっぱし、レオは天才だね」  セドリックはレオナルドを守りたかった。  幼い頃か見続けてきた悪夢を現実にさせない為ならば、レオナルドに嫌われる覚悟はできていた。疎まれても構わないとすら思っていた。  ……泣きそうな顔をされると困る。  レオナルドにはセドリックが考えていることがわからない。  一方的な言葉だけが与えられてきた。そこには強すぎる兄弟愛があるのだと疑うことすらできなかったのは、セドリックが隠し切れない愛情溢れた目をレオナルドに向けるからだろう。 「僕はシェリルのところにいくよ」  セドリックは背を向けて歩き出す。  それを引き留めることもせず、レオナルドは離れていくセドリックの背中を見続ける。  ……義姉上がいてよかった。  幼い頃から傍にいたシェリルならばセドリックを支えられるだろう。  ……ごめん。兄上。  レオナルドが続けてきた研究はセドリックの望まないことだっただろう。  遠ざかっていくセドリックを追いかけることはしない。ただ、その背が見えなくなるまで見ていた。

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