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01-5.

「またそんな恰好をしているのか!!」  初めて言われた言葉だった。  誰もがクリスの好きにさせていた。欲しがるものを与え、着飾らせ、クリスが望んでいるだろう賛辞の声をかける。  そうしておけば、問題を頻繁に引き起こすクリスの怒りを買わなくて済む。  それが子爵家の共通認識だった。 「洋服くらいいいでしょ? 僕が似合う服を着るのが一番いいと思わない?」  クリスはぬいぐるみを抱き締める。  父親とは目を合わせない。  明らかに怒りに満ちている視線を向けられたのは、侯爵家の指示に従わず、勝手な行動をしたことが発覚した日以来である。 「お前という奴は……!!」  父親はクリスに触ろうともしない。  その手で撫ぜられたことはない。褒められたことも一度もなかった。 「いや。話をするだけ無駄だったな」  ……僕も捨てられるんだ。  クリスを子爵家に置いておく価値がないと判断をしたのだろう。  母親違いの妹たちを産んだ女性が捨てられた時と同じだ。父親が愛しているのは子爵家に繁栄を与える都合の良い存在だ。  クリスのように見た目を気に配り、我儘放題の子どもには価値を見出せなくなるのは時間の問題だった。 「お前を勘当する。二度と子爵家の敷地に立ち入ることは許さん」  父親の言い放った言葉に対し、クリスはため息を零した。  ……わかっていたけど。  サザンクロス侯爵家を通じて与えられていた指示に従わなかった。  学院時代の先輩であるジェイドが何を企んでいたのか、クリスは最後まで知ることが許されず、与えられたことをすれば報酬が渡された。  ただそれだけの関係さえも断ち切られ、ジェイドはクリスに対して学院時代の後輩の一人だと切り捨てたのだろう。  ……僕の価値って、なんだったんだろう。  学院時代は好きなように振る舞っていた。  歴史のある貴族たちの都合の良い遊び相手として立場を確立させ、平民たちとは違うのだと自分自身に言い聞かせることにより、与えられる苦痛を受け入れてきた。 「……パパ」  用件はそれだけだったのだろう。

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