154 / 155
01-10.
「んぅ……」
隣で少々苦しそうな寝息が聞こえる。
昨夜、両親の目を盗むように自分自身の枕を抱えながら、セドリックの部屋に潜り込んできたレオナルドの声だ。
幼い声なのは当然だろう。
夢の中とは違い、レオナルドは五歳だ。レオナルドの上に重なりながら気持ちよさそうな寝息を立てているアルフレッドは三歳である。
……また乗っかっている。
歳の近いレオナルドとアルフレッドは仲が良い。
昨夜も片手で枕を抱えながら、手を繋いでやってきた二人の姿を思い出し、セドリックは優しく微笑む。
それから起こさないように気を付けながらアルフレッドの身体を抱きかかえ、レオナルドの隣に寝かせる。移動させられているのにもかかわらず寝続けるアルフレッドの豪快さには、いつも驚かれる。
「大丈夫だよ」
セドリックは自分自身に言い聞かせる。
「僕が二人を守るから」
悪夢の続きを思い出す。
……レオも、アルも、死なせない。
レオナルドの死の真相を探ろうとしたアルフレッドも奇怪な死を遂げた。
二人の愛息子の死を聞かされた母は気が狂い、家族が笑顔のままの写真を抱き締めたまま服毒自殺をした。
次から次へといなくなっていく家族に耐えられなくなったのだろう。父はセドリックに伯爵を継承させると、そのまま、出奔して帰らなかった。
取り残されたセドリックは何を考えていたのだろうか。
……大丈夫。守って見せるから。
悪夢は未来の自分自身からの警告だ。
セドリックは当然のように受け入れていた。いや、幸せそうな顔をして眠っているレオナルドとアルフレッドを見ていると受け入れるしかなかった。
「……ごめんね。レオ」
セドリックはレオナルドの頭を撫ぜる。
楽しい夢を見ているのだろうか。まだ五歳の弟は幸せそうだ。
……レオの夢を奪ってしまうけど。
方法をいくつも考えている。
その中でも有力なのはレオナルドを学院に通わせないことである。死因となった場所に近づかせなければ回避できるかもしれない。
ともだちにシェアしよう!