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二人目のレント:朝起きて

 何とも言えない感覚に襲われ、目が覚めた。喉元を襲う生々しい感覚。  慌てて自分の喉を触ると、冷たく濡れている。思わず悲鳴を上げて手のひらを見たが、それが寝ている間にかいた大量の汗だと理解するのに、しばらくかかってしまった。 「なんだ……夢かよ」  そうつぶやいて、しかし夢の内容が思い出せない。周りを見回しても、いつもの、少し散らかった俺の部屋の風景があるだけだ。  あまりの気持ち悪さに、急いで一階へと下り、風呂場へと向かった。少しぬるめのシャワーが全身の汗を洗い流していく。そこでようやく一息ついた。  部屋に戻って初めて、スマートリンケージに「メッセージ有り」の表示が出ていることに気が付いた。親友の秋水(あきみ)セファからだ。 『おはよう、レント。今日のお昼、一緒に食べる?』  大学に、親友はおろか友人と呼べる人間さえ二人しかいない。セファはその一人なのだが、俺もセファも人づきあいが苦手で――理由はそれぞれ違うのだが――大学で知り合って以降、いつの間にかほとんどの時間を一緒に行動するようになっていた。  セファの、線の細く、どこか儚げな様子を思い浮かべる。そしてあることに気が付いた。  確か……昨日、夜にセファの部屋で一緒に英語の課題をしていたはずなのだが、どうやって家に帰ってきたのか、思い出せないのだ。  いや、そもそも昨日はセファのアパートに泊めてもらう予定だったはずなのだが。 「おっかしいな……」  とりあえずセファに、『OK。じゃあ、学食で』と返事をしておいた。今日の大学の授業は昼からしかない。時計を見ると、そろそろ出ないといけない時間だ。  慌てて用意を済ませ、家を出る。そして最寄りの駅まで、俺はスクーターを走らせた。

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