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二人目のレント:学食にて
――いやぁ、困ったな。
大学の学生食堂は今日も混んでいる。何の味気もない、白く四角いテーブルが所狭しと並べられてはいるが、あるものでは厳つい体育会系の男四人が、またあるものでは向かい合ったバカップルが、食事を終えた後でもその支配権を主張するかのように陣取ったままだ。
――世界が終わるまでそこにいるつもりか、お前らは。
心の中でそうつぶやいたところで、彼らが席を離れるわけでもない。仕方なく、トレイを持った状態で空席を探しているのだが、その姿はさぞ滑稽に映っているだろう……いや、そんなことを気にしている奴など、この食堂の中にはいないか。
待ち合わせをしているはずのセファの姿も、やはり食堂の中には見当たらない。
セファは大学近くに一人住まいをしているのだから、一足先に席を取っておいてくれても良かったのにと、少々身勝手な独り言がこぼれ落ちた。
兎も角、トレーの上のカルボナーラが冷める前に何とか席を確保しなければならない。目下のところそれが喫緊の課題なのだ。
きょろきょろと辺りを見回し……そして、見つけた。
座れそうな席。四人掛けのテーブルに一人だけが座っている窓際の席。
相席チャーンスと思ったのも束の間、そこにいる強大な『邪魔物』に思わず顔をしかめてしまった。
白いブラウスに薄空色のスカート。黒縁眼鏡を掛けた女性が、手に持っていた携帯型端末――スマートリンケージを一生懸命操作している。
カチューシャで押さえたサラサラのストレートヘアが重力に従って下に垂れていて、顔ははっきりとは見えない。随分と手入れが行き届いているようで、窓を通して入る光が彼女の髪に天使の輪を作っていた。
――女か……
さすがに女性が座っているところに相席を頼むのは気が引ける。かといってこのまま突っ立っているのも……
そんな風に、他の席が空くのを待つのに必要な忍耐力と相席を頼む羞恥心を、頭の中で一生懸命に天秤にかけていたところ、突然、その女性が顔を上げた。
そして俺の方に向けて、手を振りだす。
――な、なんで?
別に「気づけ気づけ」と念力を送っていた訳ではないし、そもそも俺は超能力者なんかではない。
凡庸たる己の存在に絶望を感じつつも、その女性はきっと俺の近くにいる知り合いにでも手を振っているのだろうと思い、辺りを見回してみたが、俺の近くにそれらしい人物はいない。
再び女性を見たが、彼女はまだ俺に向けて手を振っていた。
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