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二人目のレント:テーブルの攻防

 セファの細い指の先、爪にも薄桜色のマニキュアが光を反射している。 「ん? なんだそれ」 「なんだって、サンドイッチだよ」 「お、おう。そんなこと、見ればわかる」 「レントに食べてもらおうと思って、作ってきたんだ」  カシャン!  俺の手に握られていたフォークが、皿の上に落ちた。 「ご、ごめん」 「おっちょこちょいだね、レントは」 「え、え、えっと、それ、どういう風の吹き回し?」 「レント、イマドキそんな言葉流行らないよ」  笑いながらも、サンドイッチを差し出す手を引っ込めようとはしない。  セファが自分でお弁当を作ってきたのを見たのは初めてだ。ましてや、俺のため?  そこに何か、無言の圧力のようなものを感じる。そう、これは拒否してはいけない案件に違いない……  俺はセファからサンドイッチを受け取ろうと手を伸ばしたのだが、それを見たセファがサンドイッチを引っ込める。 「レント、手は洗った?」 「あ、いや、洗ってない」 「仕方ないなぁ」  苦笑しながら、今度は俺の口元へとサンドイッチを差し出した。 「それじゃ、このままかじったらいいよ」  そう言ってセファが笑う。黒縁眼鏡の奥から俺を見つめる瞳は、まるで……そう、何の罪も犯したことの無い、純真無垢な瞳だった。

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