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二人目のレント:というか防戦しかない
俺の長いとは言えない人生の中でも、これほど『食べていいのかどうか迷う』サンドイッチに遭遇したのは、正直初めてだ。
――これじゃまるで、
バカップル。そうは思うのだが、セファの微笑みが俺への強烈なプレッシャーとなっている。拒否権はなさそうだ……
恐る恐るサンドイッチにかぶりつくと、ツナと卵の味が口の中いっぱいに広がった。
「美味しい、かな」
不安の色を眼鏡のレンズに映しながら、そう尋ねるセファ。
「ん、うん。うまい、うまい」
「よかった」
俺の言葉を聞き、セファの表情がパッと明るくなった。
「ちゃんと、ゆで卵とか、自分で作ったんだよ」
「へぇ、セファは料理もできるんだな」
「料理って程じゃ、ないけどね」
そう言って少しはにかんだ後、セファは俺の目をじっと見つめながら、俺がかじったサンドイッチの、まさにそのかじり跡にピンク色の唇を当てた。
「うん、上出来、かな」
口に含んだサンドイッチをもぐもぐさせているが、しかし、俺の目から視線を外そうとはしない。
「はい、もう一口」
そしてまた俺の方に、サンドイッチを差し出した。
――さ、さらに攻めてくるのか……
「ス、スパゲティも食べなきゃ、冷めてしまうだろ」
その圧迫から逃げるように自分のカルボナーラを食べ始めたのだが、それを見ていたセファの眉がかすかに動くのが見てしまう。
ああ……見なきゃよかった。
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