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二人目のレント:最適解
食堂の中、俺とセファの傍を、次々と人が通り過ぎていく。皆、自分の用事に一生懸命で、他人を気にする様子はない。『他人』にはもちろん、セファも含まれている。
「で、でも、昨日まではそんなこと」
セファの恰好が昨日までとは全然変わってしまったところで、誰かがそれを気にすることも指摘することもない。
「言った通りだよ。自分に素直になっただけで」
少し肩をすくめて、セファはそう答えた。
朝起きたら無性にスカートをはきたくなったのだろうか。衝動に駆られて、クローゼットを開ける。そこにずらりと並んだ、衣装の数々……ってか、服、いつ買ったんだよ。
「そ、そうか」
そんなことはとても聞けそうにない。パンドラの箱が開きそうだ。
「嫌、かな」
一瞬、心の奥底でぞくっとする何かを感じた。
「な、何が?」
「ボ、ボクがこんな格好を、していること」
セファの声が心なしか震えている。いや、セファの声『も』というべきか。
「セ、セファがそうしたいって言うんなら、それで、い、いいんじゃないか?」
この場面で言うべき言葉の最適解など、教科書にも、大学受験の参考書にも、載ってはいないだろう。もちろん、大学で買った専門書にも。
無理やり作った俺の笑顔を、セファはどう見ただろうか。
セファは俺の言葉に、少し顔を横に倒しながら、微笑みで応えた。
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