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二人目のレント:いつもとは違う風景

 結局、誘いを断る理由も術も見いだせないままに、学生食堂を出ることにした。そしてセファと一緒に法学部の建物へと向かう。  いつもと同じ行動。当たり前の行動のはずなのだが、胸の中でもわもわとしたものが騒いでいる。  こんなの、俺の気のせいだ。気のせいにすぎない。気のせいにすぎないに違いない……  そうは思うのだが、唯一いつもとは違う光景――セファのスカート姿が視界に入るたびに、そのもわもわが大きくなっていく。 「で、部屋で何するんだ?」と訊いた俺に、セファはただ「だから、テスト勉強だって」と笑った。 「そ、そうだったな」  しかし……セファは、『心は女の子』と言っていた。それでも俺と二人きり、部屋に行くというのだろうか。 ――い、いや、単に一緒にだべりながら勉強するだけだ。これまで通りじゃないか。  セファは、そう、いつも通りなのだ。そうに違いない。服と化粧が変わっただけで、中身は同じ。そう自分に言い聞かせ続ける。 ――でも、じゃあ、今までどういう気持ちで俺と一緒にいたんだ?  ふと、そんなことが頭によぎった瞬間、急に周りの目が気になりだした。キャンパスには大勢の学生が歩いている。あるものは仲間内でおしゃべりをしながら。あるものは、スマートリンケージを見ながら…… 「どうしたの? きょろきょろして」 「あ、ああ、いや、なんでもない、なんでもない」  作り笑いを浮かべて、セファに向けて手を振る。 「ボクと歩くの、嫌かな」  しかしそう言って俺を見たセファの視線に、振っていた手が止まった。

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