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二人目のレント:異変の始まり
講義が終わった後も、俺はそれに気づかずに座り続けていた。
「レント」
隣に座っていたセファが、俺の肩を揺さぶる。思わずのけぞって、そしてセファを見ると、眼鏡の向こう側でセファが少し悲しそうな目をしたように見えた。
「あ、ああ、ごめん。ちょっと、ぼーっとしてて。い、行こうか」
苦笑いをしながら、出入り口を指さす。
「うん」
セファはそう返事をすると、軽く微笑みを浮かべた。
講義室を出て正門へと向かう。途中には大学の総合図書館があり、その正面玄関の所には、俺たちが通う大学では名物になっている銅像が立っていた。
一体誰が立てたのか。裸の少年二人が肩を組んでいる銅像。学生の間ではまことしやかに「ホモ像」と呼ばれている。その呼び方にどんな意味が込められているのか……想像に難くない。
いつも見慣れているはずのもの。しかし俺はふと、ある異変に気付き、その像を指さした。
「なあ、セファ。あれ、何だ?」
それにつられて、セファもその像に目を向ける。
「ん? レントは、あの銅像のこと、知らないの?」
そう答えたセファの表情が心なしか曇った。
「いや、いや、そうじゃなくて」
こういう時に限ってなぜこうなのか。内心、頭を抱えたくなったが、してしまった行為を取り消すことはできない。
セファは、俺の行為を誤解したのだろう。俺の言葉がセファの耳には『お前はアレか』とでも聞こえたに違いなかった。
「ほら、なんか、こう、あの像にぐしゃぐしゃと線が入ってないか?」
俺の形容は、多分正確ではない。線が入っているというよりは、まるで画面にノイズが走るように小刻みに歪んだり元通りになったりを繰り返しているのだ。
あの像が液晶パネルに表示された映像であったなら、「液晶が壊れている」というだけで済んだだろう。しかしあれは映像ではない。銅像なのだ。
「レントには、アレが見えるんだね」
セファが、像をじっと見つめながら、独り言のようにつぶやいた。
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