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二人目のレント:見られてしまった
アレ――とは、なんだろう。
セファの言う『アレ』が、俺の見ている『ノイズ』のことなのか、それとも他の何かなのか、分からない。
「アレって、どれだ」
思わず発した確認の言葉には反応せず、セファは銅像を見続けている。
銅像の傍に行って見てみようと思い、総合図書館の正面階段へ歩こうとしたところで、セファに肩をつかまれた。
「どうした?」
セファにそう声を掛ける。セファはしばらくの間、俺をじっと見つめていたが、すっと息を吸うとおもむろにつぶやいた。
「多分、データが、壊れてる」
「データ?」
セファは何を言っているのだろう。
どういうことかともう一度聞こうとしたが、セファの固くこわばった表情に、のどから言葉が出てこない。
と、いきなり後ろから、この場の雰囲気には全く似つかわしくない、底抜けに明るくお気軽な声がした。
「よお、レント。そんなところで何しとるんや?」
振り返って声の方を見る。
俺が、会えば普通に話をする数少ない人間の一人、同じ法学部の宝田 トウヤだった。短く刈ったツーブロックの下では、隠しようもないほどのニヤニヤした表情が、あふれんばかりに零れ落ちている。
それを見て俺は、頭を抱えたくなってしまった。
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