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二人目のレント:そして闇が降りる
「レント、いい、匂いがするよ」
濡れたように煌めくセファの唇が、俺の首に触れた。
「ちょ、待てって」
慌ててセファから体を離した俺を、セファの瞳が、どこか色をなくしているように見つめている。
「お、俺は」
セファの瞳が、仄かに潤んでいた。
言葉が出てこない。床に手をついて体をのけぞらせる俺に、セファはゆっくりと覆いかぶさり、今度は耳元に唇を寄せてくる。
「そういう趣味はない?」
凍る……全身が、凍ったように感じた。それは、どこまでも冷たい、闇。
「そ、そうじゃなくて、今日のセファ、なんかおかしいぞ」
俺がそう言った瞬間、俺の唇を、冷たくて柔らかいものが塞いだ。
そしてセファの舌が……俺の口の中に入り込み、蠢く。ねっとりとした感触が俺の舌に絡みついていく。
仄かな甘みと、生々しさ。
細く少し硬い指が、Tシャツの下から肌をなぞるように入ってくる。汗でまだ湿り気を帯びているにもかかわらず、まるでそれを吸い取っていくように、セファの手が俺のTシャツを少しずつたくし上げていった。
そしてセファの指が、俺の胸の先端に触れる。
体に走る電流のような快感。背徳の深淵に魂が引きずり込まれていきそうになり、そこで俺は……恐怖した。
ドンッ
大きな音とともに、セファの体が後ろへと弾き飛ばされる。
俺自身その自分の行為に驚いたが、しかし後ろに倒れたセファは驚いた様子もなく、手をついて床に顔を向けていた。
「ご、ごめん、セファ」
セファの方へと体を寄せる。振り向いたセファは、申し訳なさそうに笑っていた。
「ううん、ボクの方こそ、ごめん。変なことしちゃって」
そう言うとおもむろに立ち上がり、台所の方へと歩き出す。
「お、おい、セファ」
「ねえ、レント。何か、飲む?」
「そ、そうだな。貰うよ」
確かに、限界を過ぎていると思えるくらい、喉が渇いていた。
冷蔵庫を開け、コップにお茶を注ぐセファを見た後、俺は――セファがしたこと、そしてしようとしたことを考える。
セファと……キスをしてしまった。いや、キスどころじゃない。
こんなこと、男同士なのに、
そ、そうなのか?
でもそれ以前に、セファは親友だ。恋人じゃない。
親友とこんなこと……こんなこと……
ふと、傍にセファの気配を感じる。お茶を持ってきてくれたのだろう。
「あ、ありがと」
そう言って振り向くと、セファが、手に鈍い光を放つナイフを持って、俺を見下ろし立っていた。
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