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第一章・4

「九曜さんは、宝飾関係の会社を経営されていてな」 「あの、九曜貴金属さん、ですか」  貴士の任されている事業は、ブライダルジュエリーを扱う企業だ。  そのつながりで、父はこの縁談を決めたのだろう。 (浅はかな)  そう貴士は心の中で父を罵りながら、食事を摂っていた。  早く食べて、こんな茶番は済ませて……。  しかし、一つひっかかる点がある。 (彼は、昨夜見た夢の中の少年に、似ている)  雪のように白い肌。  淡い色の髪。  円い目に、笑みをたたえた珊瑚の唇。  華奢な手足は、小柄な体にバランスよく整っている。  そんな彼が、口を開いた。 「いずれ解ることですから言いますが。兄は竜造寺さまとの縁談を苦に、駆け落ちしました」 「何だって?」  貴士は、手を止めた。 「兄には、深く愛し合った人がいて。その方と引き裂かれるくらいなら、と」  その話に、貴士は興味をひかれた。

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