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第二章 屋敷にて

 運転手付きの高価な自動車に乗せられて、悠希は貴士の屋敷に向かった。  車中で一言も話さない、貴士。  悠希は、どんどん息が詰まって来た。 (どうしようかな。僕から、何か話しかけたほうがいいのかな)  そんなことを考えていると、貴士の携帯が鳴った。 (お父様だ)  さっき別れたばかりなのに、もう何か話が?  通話に出てみると、貴士の父・雅士は困った声だった。 『貴士。今、九曜さんの御子息と一緒か?』 「はい。車の中です」 『じつは、悠希くんは九曜さんに黙って、お見合いの代理になったそうなんだ』 「あの、兄の代わりに、ですか」  そうだ、と言う雅士は、悠希を九曜に返さないか、と持ち掛けて来た。 『九曜さんも驚いておられてね。悠希くんは、御家のためだと思ってやったことだろうが』 「だから、お見合いの席に親御さんの姿が無かったのですね」 『そういうことだ。彼もまだ10代で幼い。今回の件は無かったことに』 「……いえ、このまま私の住まいに連れて帰ります」 『なんだって?』 「私は、彼が気に入りました。すでに婚約いたしましたし」  父はまだ何か言っていたが、貴士は構わず通話を切った。

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