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第二章・3
社交界で、氷の貴公子と呼ばれる、竜造寺 貴士。
少し、怖かった。
しかしこうして見ると、礼儀正しいスマートな人だ。
(僕のこと、気に入った、って言ってくれたし)
悠希はひとまず安心して、車のシートに深くもたれた。
(ホッとしたら、何だか……、眠く……)
そのまま寝入ってしまった悠希に、貴士は驚いていた。
「私を前に居眠りするとは。本当に、良い度胸だ」
ふと、口元が緩んだ。
笑った、のか?
私は、彼を見て笑ったのか?
「笑うのは、久しぶりだ」
嘲りでも皮肉でもない、笑み。
固い蕾がほころんだような、そんな笑みを貴士は久しぶりに浮かべていた。
やがて二人を乗せた自動車は、貴士宅の敷地内に入った。
両親とは別に居を構え、独りで住んでいる。
使用人はいるが、血縁者とは距離を置いていた。
「悠希、起きなさい」
「はい……、あ!」
僕、眠っちゃってたんだ!
「し、失礼しました!」
「いや、別に構わない」
ボディガードの守る中、二人は車を降りた。
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