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第二章・4
重厚にして華麗。
ところどころに尖塔のある貴士宅は、アールヌーボー形式の個性的な建物だった。
「すごい……。まるで、お城みたい……」
そして貴士は、この城の主なのだ。
悠希は、ちらりと彼の顔を見た。
すると同じく彼も悠希の方を見て来たので、どきりとした。
「君の部屋は、用意させてある。くつろぐといい」
「あ、ありがとうございます」
「時間をおいて、使いの者を寄こすので。そうしたら、私の部屋へ」
「はい」
使用人が近づき、貴士のバッグを預かって進む。
悠希にも、同じように使用人がやって来た。
「どうぞ、お荷物を」
「ありがとう」
二人は別々の回廊へ別れてゆく。
それが悠希には、ひどく心細く感じられた。
(でも、後でまた貴士さんにはお会いできるから)
そう自分に言い聞かせ、知らない家の匂いを嗅いでいた。
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