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第二章・6
使用人に伴われ、悠希は貴士の部屋へ向かった。
回廊には、素晴らしい美術品がところどころに飾ってある。
「すごい。この大皿、有田焼かなぁ」
「よくお解りですね」
「父が、焼き物を好きなもので。それで」
「これは貴士さまが、特別に作らせたものでございます」
世界でただ一つの、逸品!
(本当に本当の、お金持ちなんだ)
そして僕は、その資産を狙ってすり寄って来た。
(何だか、悪い子だよね。僕って)
少しうなだれて、悠希は貴士の部屋へ着いた。
「貴士さま。悠希さまがおいでです」
「入れ」
悠希が前に進められ、使用人が後に下がった。
「え? あの」
「では、失礼いたします」
行ってしまった。
(貴士さんと僕、二人きり?)
あんなに会いたいと思っていたはずなのに、妙に落ち着かない。
「ソファに掛けたまえ」
「ありがとうございます」
悠希は、貴士の向かいに座った。
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