14 / 90

第二章・7

「夜に私の部屋へ。しかもパジャマで来る、という意味が解るな?」 「はい……?」  きょとん、とした悠希の表情に、貴士は眉根を寄せた。 「解らないのか?」 「えっと。お話しして、お茶を飲んで……」 「それから? その後は?」 「寝ます」  そうだ、と貴士はうなずいた。 「君は今から、私と同衾する」 「それって、つまり」  私が君を抱く、ということだ。  そんな貴士の声は、相変わらず冷静だ。  顔色一つ、変えてもいない。  だが、悠希は慌てた。 「いや、ちょっと待ってください。そんな、いきなり!」 「君も、それを覚悟でここへ来たのだろう?」  確かに結婚を前提とすれば、そういうことがあるけど!  でもだけど! 「こ、心の準備が!」 「往生際が悪いな」  貴士はそう言うと、音もなく立ち上がった。 「ついて来なさい」 「は、はい……」  行きつく先は、きっと寝室。  足元をふわふわさせながら、悠希は貴士の後に続いた。

ともだちにシェアしよう!