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第三章・4
数年前の夜会、貴士は激務の後で出席した。
疲れた体に酷だったので、すぐに切り上げようとしてはいた。
しかし、彼の隣に掛けた男が、しきりに酒を勧めてくる。
男は大切な取引相手。
無下にもできずに、勧められるままアルコールを口にしていた。
そして。
「失礼。少し、風に当たって来ます」
酔いを自覚した貴士はバルコニーへ出たが、夜風は彼からどんどん体温を奪ってゆく。
「いかん。悪酔いしたようだ」
椅子に掛け、冷や汗に耐えていると、誰かが近づいてくる。
それは、まだ10代の少年だった。
「あの。大丈夫ですか? お体の具合が、よろしくないのでは?」
「平気だ。少し休めば、良くなるよ」
ほとんど彼の顔も見ないまま、貴士は手を振った。
正直、誰かと話す余裕もなかったのだ。
少年は立ち去ったが、すぐにまた戻って来た。
「お水を、お持ちしました。いかがですか?」
「水? いただこう」
そこで初めて、貴士は少年の顔を見た。
心配そうにグラスを差し出す、白い肌の美しい少年。
彼が、悠希だったのだ。
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