23 / 90

第三章・8

 自室に戻った悠希は、弾む胸を落ち着かせていた。 「しばらく、ここで」  貴士さんと一緒に、暮らせるんだ!  嬉しい反面、不安もある。 『共に暮らして、波長が合えば、正式に婚約だ』  貴士の言葉が、引っかかる。 「波長が合わなければ破談、ってことだよね」  僕、大丈夫かな。  貴士さんとうまく、やっていけるかな。 「くよくよ考えても、仕方がない!」  できるだけ貴士さんの喜ぶことを、しよう。  彼の喜ぶ顔が、見たいんだ。  氷の貴公子と呼ばれる、竜造寺 貴士。 「今朝は、その笑顔が見られたんだから。幸先はいいはず」  悠希は胸に灯る恋心を、大切に育て始めた。

ともだちにシェアしよう!