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第四章・3
朝食の席で、悠希はできあがった弁当を貴士に差し出した。
「これ、お昼に食べてください」
「何だ、これは」
「お弁当です」
弁当、だと?
貴士は、眉根を寄せた。
「厨房のシェフが、君に渡せと言ったのか?」
「いいえ、違います。僕が勝手に作ったんです。皆さんを、叱らないでください」
「作った? 君が?」
「お口に合えば、良いんですけど」
むう、と貴士は唇を結んだ。
(まさか、私に弁当を寄こすとは。本当に、変わった子だ)
これまで屋敷に連れて来た婚約者たちとは、全く違う。
「手ずから料理をするとは。庶民的だな」
「僕、学生の頃は自分でよくお弁当作ってたんです」
「使用人は? 君の実家に、シェフはいなかったのか?」
「皆さん、お暇を出さざるを得なくて」
悠希の実家が経営難とは知っていたが、まさか子息が自分で弁当を作るまでとは。
(これは、九曜貴金属さんには早急に融資をしなくてはな)
仮にも、恩人の実家だ。
出社してすぐのスケジュールを、貴士は頭の中で組み直していた。
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