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第四章・4
近々に悠希の父、つまり九曜の代表取締役と面談をする約束を取り付けた後、貴士は社長室で世界の経済動向を睨んでいた。
パソコンを数台駆使して、複数の株価を同時にチェック。
メールで送られてきた、新作ジュエリーのデザインに目を通す。
社内人事異動の確認。
そんなことをしながらだが、頭の隅に引っかかって取れない案件が一つある。
「……悠希は、どんな弁当を作ったのだろう」
仮にも九曜家の子息だ。
舌は肥えているだろうから、滅多なものは出てこないと思うが……。
気が付くと、時計を気にしている。
正午を、意識している。
「気が散って、仕事にならない!」
11時30分を少し回ったところで、貴士は降参した。
絹の風呂敷に包まれた重箱をデスクの上に出し、そっと蓋を開けてみる。
ふわりと、良い香りが漂った。
思いきって全開してみると、そこには美味しそうな料理とおむすびがずらりと並んでいた。
だがしかし。
「キャラ弁、だと……?」
ハンバーグは熊さん、ソーセージはタコさん、ウズラの卵はうさぎさん。
どれもが可愛らしくデコレーションされているのだ!
「これは……、どう解釈していいのやら……」
添えてあったカードには、『お仕事お疲れ様です』と書かれてあった。
「疲れているだろうから、心を癒せということなのかな」
試しに卵焼きを口にすると、素敵に甘い。
「甘い卵焼きなど、久しぶりだ」
貴士の口の端は、上にあがった。
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