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第六章・3
『お疲れでしょうから、致し方ないことかと』
男の言葉を繰り返すと、耳が熱くなる思いだ。
「あの人、僕が昨夜何をやったか知ってるんだ」
ああ!
やっぱり恥ずかしい!
シャワーの準備が整い、バスを使う間も、悠希は頬を火照らせていた。
バスタブに浸かり、自分の腕を湯で撫でる。
滑らかな白い肌は、全てすっかり貴士のものになったのだ。
「恥ずかしいけど……、嬉しいかも」
あの時、貴士さんは僕を。
僕だけを、しっかりと見てくれてたんだ。
「もちろんそれで、貴士さんが僕のものになったなんて思わないけど」
おそらく昨夜は、婚約から結婚に至るまでの通過儀礼の一つに過ぎないのだろう。
「それでも、一歩前進だ」
勢いよく、悠希はバスタブから上がった。
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