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第六章・5
まるで高級ホテルのラウンジのような、広々とした空間。
アロマの香りに、優しい音楽。
そんなヘアーサロンに、悠希は通された。
「今日はありがとうございます。どのようなスタイルにいたしましょうか」
「あまり詳しくないので、お任せでお願いします」
「かしこまりました」
美容師はタブレットを操作し、いくつかのパターンを示した。
「こちらはいかがでしょう。お客様は頭の形がお綺麗なので、ストレートヘアでも充分素敵です」
サラサラの、ツーブロックマッシュ。
今の悠希の髪型にも似ているので、さほど違和感がない。
「じゃあ、これでお願いします」
「ありがとうございます」
シャンプーに、紅茶。
マッサージに、カット。
すべてがゆったりとした時間の中で、過ぎていく。
眉を整え、ネイルの手入れまでしてくれた。
2時間後、鏡の中の悠希は自分の姿に驚いていた。
「これが、僕……?」
何か、カッコよくなってるんだけど?
「とてもお似合いでございますよ」
辻も、笑顔で褒めてくれた。
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