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第七章 貴士の変化
屋敷のポーチで帰宅した貴士を出迎えた悠希は、まずお礼を述べた。
「貴士さん、お帰りなさい。たくさんのお洋服を、ありがとうございます」
「気づいたのか。君の好みに合えば良かったが」
「さっそく、着させてもらってます」
それより、と貴士は目を細めた。
「見違えたな。ずいぶん垢抜けたものだ」
「気づいてくださいましたか?」
髪を整えた悠希は、さらに輝いて見える。
「とても、似合っている」
「ありがとうございます!」
嬉しい悠希に、貴士は優美なクリスタルのオブジェを手渡した。
今日のゴルフコンペで獲得した、優勝のトロフィーだ。
「君の部屋にでも、飾るといい」
「え、でも」
「私には、無用なものだ」
きっと貴士は、こんなトロフィーなど貰い飽きているのだろう。
惜しげもなく悠希にプレゼントすると、さっさと屋敷に入って行く。
悠希は、慌ててその後を追った。
「あの。これからお時間いただけますか? お見せしたいものが、あるんですけど」
「シャワーの後なら、お茶を飲みながら見よう」
「はい。ティールームでよろしいですか?」
「私の部屋へ。そこで、一緒にティータイムだ」
大股で歩く貴士には、もうついて行けない。
立ち止まるしかない悠希だったが、お茶の時間という楽しみができた。
「クリスタルまでもらっちゃった!」
胸に抱きしめ、その時を楽しみに待った。
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