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第七章・4
貴士に付き合いカップの紅茶を飲む悠希を、じっと見ていた。
(嫌なことなど、淡雪のように溶けていってしまう)
その容姿、仕草、声。
悠希は貴士の心に、どんどん食い込む存在になっていた。
(なぜだろう)
なぜ、悠希はこんなにも。
「なぜ君は、そんなに魅力的なんだろうか」
「え!? 何ですか、突然!?」
「君には、これまでの婚約者たちとは違う魅力を感じるんだ」
悠希は、首を傾げるしかなかった。
(これって、褒められてるんだよね?)
しかし、だからといって自分の魅力をアピールするのも嫌味な話だ。
「もし貴士さんが僕をそんな風に思ってくださっているのなら、嬉しいです」
素直な気持ちを、口にした。
その言葉に、貴士はさらに深くうなずいた。
「謙虚だな、悠希は。そんなところもまた、魅力的だ」
「あ、ありがとうございます」
謙虚など、無縁の貴士がそう言う。
(私は今まで、自分のためだけに生きて来たというのに)
それがどうだ。
今では、この目の前の小さな少年のために何かしてあげたい、と考えている。
そんな自分の心の変化に、少々戸惑っていた。
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