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第七章・5

「そう言えば。明日の午後、君の父上と会うことになっている」 「お父様と、ですか」 「竜造寺グループが、本格的に九曜貴金属へ融資することに決まったんだ」 「ありがとうございます!」  良かった!  これで会社が、家族が助かるんだ!  悠希は満面の笑みをたたえたが、貴士の次の言葉に顔を引き締めた。 「悠希も来るか? 父上に会いに」 「いえ……。僕は、お父様とは会わない方が……」  喜ぶと思っていた悠希の意外な返事を、貴士は不思議に感じた。 「何かあったのか? 父上との間に」 「僕、勝手にお兄様の代わりにお見合いしたものですから。電話で叱られたんです」 「ふむ」  しかし、と貴士は長い脚を組んだ。 「正直に言えば、悠希が婚約者でなければ、この話は無かった」 「なぜですか?」 「先だっても言った通り、君は私の恩人だ。だからこそ、融資をする気になった」  だから、父上は君を叱ることなどできないはずだ。  そう、貴士は言う。 「一緒に来るといい。父上も、私の前では君を叱ったりしないだろう」 「はい……」  まだ心が委縮している悠希に、貴士は微笑んだ。 「父上に会うのが、怖いか?」 「はい」  ここでも素直な悠希に、貴士は身を乗り出した。 「怖がりの悠希に、おまじないを掛けよう」  そして、静かにキスをした。

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