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第九章・9

「大丈夫。ベッドに入っていたよ」 『おやすみの邪魔をして、すみません』 「いや、私も声が聴きたかった」  いつまでも、聴いていたい。  そんな、悠希の優しい声だった。 「私のことを色々と罵る人間はいるが」 『はい?』 「氷の貴公子、だとか」 『ええ。そうですね……』 「だが、これだけは言っておこう。悠希、君を愛している」  悠希という暖かな太陽の光で、貴士の心の氷が解けた瞬間だった。 『貴士さん……』 「参ったよ。君がいないと、寂しくて仕方がない」 『貴士、さん。僕も、僕も、貴士さんを、愛して……』 「泣かないで。きっと、迎えに行くから」  愛してるよ、悠希。  悠希が泣き止むまで、貴士は優しい呪文を唱え続けた。

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