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第十章 誓い
さて、どう動くか。
深夜だが、貴士は眠れずベッドの上に掛けていた。
「九曜貴金属の株を買い占め、社を乗っ取り……」
そして、悠希をこの手にする。
「駄目だ。それでは、今までの私からは抜け出せない」
『氷の貴公子の贄になど、しませんから』
悠希の父は、こう言って私を退けた。
氷の貴公子は、廃業しなくてはならないのだ。
「どうすればいい。どう行動すれば」
教えてくれ、悠希。
君なら、どう動く?
貴士は、悠希を想った。
素直で、謙虚だった少年。
雪のように清らかだった、悠希。
「素直で謙虚、か」
ならば、その悠希を真似てみよう。
巧くできるかどうかは解らないが、やってみよう。
「私に、最も似合わない行動になるな」
巧くやろうなどと、思うまい。
下手に繕えば、すぐに化けの皮が剥がれる。
「ただ、悠希が愛しい。それだけを伝えればいいんだ」
そう決めて、手をベッドサイドのグラスに伸ばした。
酒は全て、飲みつくしていた。
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