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第十章・3
「誰かしら」
休日の九曜家を訪ねてくるような人とは、一体?
希衣が防犯カメラで外を確認すると、背の高い若い男が立っている。
そしてインターホン越しに、名乗って来た。
「九曜さん、こんにちは。竜造寺です」
その声に、真っ先に反応したのは、悠希だった。
「貴士さん!?」
「悠希、待ちなさい!」
丈明が止める間もなく、悠希は玄関のドアを開け放った。
「貴士さん!」
「悠希」
「会いたかった……。会いたかったです、貴士さん……」
「私もだよ」
貴士にかじりつく悠希だったが、両親が揃って出て来た。
「悠希。こんな場所で、はしたない」
「竜造寺さんでしたか。どうぞ、お上がりになって」
「いや、お話しならここで伺おう」
不機嫌な丈明だったが、希衣は貴士を応接室へと案内した。
「お茶、僕が淹れますね」
さっきまで塞ぎ込んでいた悠希が、貴士の顔を見るなり活き活きと動き始める。
その姿に、希衣は安堵し、丈明は驚いた。
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