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第十章・5
「竜造寺さんの真剣なお気持ちは、解りました。でも、どうしてこんなに悠希に執着なさるのですか?」
希衣の言葉に、貴士は一つひとつ丁寧に答えていった。
「執着、とは違います。もし悠希くんが、わたくしのことを嫌とおっしゃるなら、退きます」
初めは、彼が今まで自分の周りには居なかった類の人間なので、興味を惹かれた。
しかし、その言動に心がほだされていった。
「悠希くんの明るさ、優しさ、温かさ。全てが、私の生きる活力となりました」
今では、心より愛しています。
飾りのない素直な言葉は、悠希の胸に沁みていった。
希衣の、丈明の心を動かした。
「しかし、悠希はまだ18歳の子どもです。結婚は、早急かと」
「大学進学も果たしたことですし」
両親の心配は、もっともだ。
貴士は、それにも誠意を尽くして答えた。
「もちろん、悠希くんの学びの機会を奪う気はありません。結婚も、今すぐに、というわけではなく」
婚約という形で、御縁を結ばせていただきたい。
「大学卒業の後、悠希くんの心に変わりがなければ。わたくしを愛してくれているのならば、その時こそ結婚したいと考えています」
どうか、と貴士は深々と頭を下げた。
「悠希くんとの婚約を、お許しください」
「貴士さん」
悠希の目に、涙が浮かんだ。
喜びの、涙だった。
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