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第十二章 風と光と

 悠希は、貴士と出会って二回目の春を迎えていた。  ゆっくりと歩く庭園は、桜の並木で彩られている。  少し、風の強い日だった。  風が吹くたびに、桜の花びらが舞った。 「どうした? 溜息なんかついて」  隣には、愛しい貴士が寄り添ってくれている。  それが悠希には、この上なく嬉しかった。 「いい結婚式だったなあ、って思って。それで」 「日明くん、とても幸せそうだったな」 「はい」  三日前、日明は式を挙げた。  貴士の口添えもあり、彼は九曜の家に戻ることができたのだ。  両親から、安村との結婚も許してもらうことができた。  悠希と日明、共に男子だが、第二性がオメガだ。  そのため安村は九曜家に婿入りし、跡継ぎの父となることを選んだ。 『日明さんと一緒になれるのでしたら、どんな道だろうと迷わず進みます』  そんな彼の言葉に、貴士は自分と通じるものを感じた。 (私も、悠希のパートナーになるためなら、何でもするだろう)  現に今こうして、会社を休んでのんびりと彼の隣を歩いているのだから。

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