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第十二章・2
「でも、いいんですか? 貴士さん、会社お休みしちゃって」
「日明くんの式のために、悠希としばらく会えなかったからな」
式の準備で、九曜家の方へずっと帰っていた悠希だ。
久しぶりの貴士邸での彼は、ますます魅力的に見えた。
(だから貴士さん、昨夜はあんなに……)
激しい情事の名残が、まだ体内にくすぶっている心地だ。
半年ほど前、悠希は無事に発情期を迎えた。
体の変化も、ようやく落ち着いてきたところだ。
発情抑制剤を飲み、ピルを使っているので、妊娠の可能性は無いに等しい。
それでも貴士は、必ず悠希に確認した。
『悠希、ピルは飲んでいるか?』
その眼差しは、真剣そのものだ。
大学で学ぶ途中の悠希を、心から思いやっていた。
万が一、子どもができたら。
『僕、その時は休学して赤ちゃんを産みますよ?』
『いや、ダメだ。式もまだの君が孕むと、九曜の家が陰口を叩かれる』
竜造寺家と同じくらいに、いや、それ以上に九曜家を大切にしてくれる貴士に、悠希は深い信頼を覚えていた。
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