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第49話 C-02 西名×琉加 ⑳

 「廉こっちよ」    タクシーから降りホテルのエントランスで母親が手招きしてるのが見え、小走りで赤いドレスで胸元のネックレスがキラキラ輝いている。隣には高級スーツをビシッと決めた父親が立っていた。  「ごめん、道混んでて」  「久しぶりね最近家に顔出さないけどちゃんと食べてる?」  「母さんもう30超えてるんだからそんな心配いらないって」  一年半前、赤坂院が開院してから僕は実家出て病院近くで一人暮らしを始めた。兄は早くに結婚しとっくに家を出ていた分、父と母と過ごす時間は多く手をかけてくれた。 父親とは会議で数ヶ月に一度は会うし連絡は取り合うが母親とは半年ぶりか。母親のドレス姿もそうだが父親も会えば白衣姿の仕事着で正装を見る機会はほとんどない。  「兄貴は?」  「もう会場内にいるわよ」  一流ホテルの宴会場。入口にある"東京美容外科医師協会"と書いた歓迎プレートを通り過ぎ、進んで行くとすでに出席者のほとんどが集まりざわざわと交流が始まっていていた。 兄とも合流して家族4人で会場内を歩く。  学会とは名ばかりいわゆる懇親パーティーでお酒や料理をたしなみながらドクター同士の交流の場だ。ここでは難しい専門用語の代わりに、どの病院の誰々が、、などの主婦たちの井戸端会議とさほど変わらない会話だ。 参加者は開業医家族、または長く美容外科に携わりそこそこの経験や技術を持っているドクターのみ。それがより居づらくさせている。  「あれ西名くんじゃないか。ご家族お揃いで」  「先生!お久しぶりです」  声をかけてきたのは父親がお世話になっているドクターの一人でこの業界はいれば名前は知っているベテランドクターで公演会や著書も多く出版している。父親と握手をして母親とも親しげに会話が始まり、僕もニコニコと作り笑いを精一杯見せる。  「優秀な息子さん達二人も病院が増えてそれぞれ院長として頑張ってるそうだね。」  「はい。先日先生の著書も拝見させて頂きました。これからの整形手術の概念を覆すような斬新な内容でした」  「いやいやそれは嬉しいな。業界ナンバーワンの病院の後継者にそう言ってもらえるなんてね。はっはっは。」  用意したような兄の受け答えを真横で聞きながら鼻で笑った。上部の要領のいいところは見習うべきだろうけど羨ましいとは思わない。  「何だよ?」  「本当に読んだわけ?」  「あぁ。誰かが書いたレビューをな」  予想通りの兄らしい返答に呆れているとステージに上がってマイクの前に立った金ピカの腕時計を光らせた協会の会長を全員が注目し会場が静かになった。  「皆さん今日はお集まり頂き感謝します。昨今の整形技術の進歩は目覚しい進化を遂げています。美容外科は医療です!しかしまだまだダーティーなイメージは完全に払拭出来ていません。その為に美容外科医師である皆さんの知識や経験を今後の美容医療の発展の為に意見交換や情報交換をし美容業界を盛り上げていければと考えています!』  拍手を浴びて"乾杯!!"とコールをしてパーティーの開会を告げると会場内は更に華やかさを増していく。  バーテンダーがボトルやシェイカーを振ってお酒を振る舞いシェフが振る舞う西洋料理のフルコースがテーブルに並ぶ。 その横でピアノの生演奏が鳴り響く中、ドレスアップした200人程の美容医療関係者のまさに勝ち組のパーティーそのものだ。

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