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第50話 C-02 西名×琉加 ㉑
家族から離れ一人端っこのテーブルに並んだ料理を一口食べてみる。なかなかすぐ料理にありつけずやっと空腹の胃に食べ物が入る。今日は食べ過ぎないしお酒も程々にしか飲まないつもり。
背中をトントンと叩かれて振り返るとグラスを持ってオールバックの髪にブルーのスーツの男。
「久しぶりっ、西名!」
医大を卒業後、確か医療研修施設の形成外科で一緒だった奴だったかな。だけど何度か喋った事あるレベルの知り合いで、もはや名前どころか顔もうる覚えだ。どうしてそんなやつがこのパーティーに?
「えー…っと」
「まさか忘れられた?酷いな〜」
渡された名刺を見てもやっぱり名前にはピンとこず、何度も名刺と顔を往復させて見る。研修期間は特に仲間とか同僚とか連 むってのが面倒でずっと一人でいた。"西名病院の息子"の色眼鏡から避ける為でもあったけど。
名刺には名前の上にプチ整形などの低価格整形の草分け存在の病院で、知名度はウチよりある病院名が書かれていた。
「……クリニック、、副院長?」
「そう。今クリニックで副院長やってんだよ」
「えっ?確か、、形成外科志望じゃなかった?」
「やっと思い出してくれたな!いやさぁ〜形成に一度は言ったんだけど、医者になったからにはドカンと稼ぎたいじゃん。だったらちまちま形成いないで美容の方いこうと思ってね」
別に医者をなりたい理由なんて人それぞれだし他人がどうこう言う権利はないけど、正直こうゆうやつがいるから美容外科にいく医者はお金儲け目的とかチャラいってイメージになるんだ。
「へぇ……そうなんだ」
「そういえば西名はまだ独身?」
「うん、、まぁそうだけど」
「何でだよ。有名病院で院長やっててモテないわけないっしょ!?あーあれ?遊びたいタイプか。だから特定の相手作らないとかかな?」
左手の薬指を確認して言ったのか大体こうゆうよく喋るタイプは出世はする。それとお金儲け主義の院長なら可愛い部下として手元に置いておいてもらえる。
ただ僕はこんなやつを医者と思いたくないし同業なんて吐き気がする。
「あんた…みたいな……奴がっ、」
「廉っ!何してんだ会長に挨拶に行くぞ」
兄が呼びに来て肩を掴まれギリギリ暴言を踏みとどまった。持っていたグラスを投げそうになった手はまだ少し震えている。彼は兄に会釈をして"それじゃまた"とニヒルな笑みで去って行った。
「今のは?」
「、、別に。ちょっとトイレ」
居心地悪さに限界が来て逃げる様にトイレに入った。やっぱりこうゆうパーティーに来てプラスなんて何も無い。愛想笑いとどうでもいい話を永遠と聞いて精神をすり減らすだけだ。
挨拶周りでスマホを触るのもずっと我慢していた。30分前の彼からのメッセージを見て抜け出すタイミングを考えながら返事せた。
"もうすぐ終わるから行けそうだよ"
手洗い場で手を洗って大きな鏡を見ると神経疲れで酷い顔をしている。彼に会う前にいつもの西名先生の顔に戻しておかないと。するとふっと隣りの鏡に映り込んで目があったのは兄。
「廉。この後数人の数人の先生達と店取って移動する。俺たちにも声かかったから準備しろ」
「僕はいかないよ」
「それはダメだ、強制参加だ。もう少し西名家の顔を立てろ。これからも何かとお世話になる先生方だしな」
「今日はこの後予定あるしホントに無理。兄貴だけで十分じゃない?別に兄貴みたいに顔色伺って気の聞いたトーク出来ないし、居ても意味ないから」
そう言って広いトイレの出口にコツコツと靴の音を立てて出て行く瞬間にキュッと水が止まる音がしてトイレに兄の声が響いた。
「ふーん。そうか、、まぁ忙しいよな。患者の大学生と頻繁に会ってるとな」
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