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第51話 C-02 西名×琉加 ㉒

 背中に浴びたまさかの兄の言葉に足が完全に止まった。  「……何言って、、?」  「あれ違うか、おかしいな。俺にはお前にみえるんだけどなぁ」  「だから何の話だよ」  振り向いてそう言うと兄貴はポケットから出したスマホを操作するとスッと差し出した。  「自分で見てみろ。これで思い出すか」  ゆっくり近づきながら少しパニックになっている脳内を静かに深呼吸して冷静さを保つ。黒い画面が距離が近づく度、はっきりと目に入ってきた。 スマホを手に取り映し出された画面には僕と彼。抱き合った駐車場での写真がはっきりと写っていた。  「何、、これ?」  「こっちのセリフだ。」  「……盗撮なんかして、、最悪」  「おっと勘違いするな。撮ったのは俺じゃない」  「嘘。兄貴じゃなきゃ誰に撮らせた!?」  「何で俺がお前にそんな事する必要がある?これは今朝、銀座院の俺のパソコンに送られてきた。ご丁寧に相手の名前や学校名も一緒にな」  これだけじゃないと更に見せられた写真には彼と自宅マンションに入って行く様子も写っていた。駐車場からそのまま跡をつけて撮ったものだろうとすぐにわかった。 色んな感情が脳内を巡って、咄嗟に消去ボタンを押して二枚の写真を消去すり。ここで消したところでデータは残っているし無意味なのはわかっているけれど。  「誰が、、写真を?」  「それはまだ。これを撮って送ってきたやつを詮索するのはひとまず置いといて。廉、この写真はどうゆう事なのが反論あるなら聞こうか」  「聞いてどうするんだよ」  「別にお前の恋愛に口出しはしないけどな、患者となれば別だ。しかも男だろ。まぁちょっとした遊びだったと言うならもうここで忘れてなかった事にする」  思えば本来の目的は彼に手術を辞めさせる事、自分に自信を持って前に進んでもらう事だったんだ。そして願いは叶った。  明日でオイルの期限は切れる。きっとこの7日間の記憶も同時になくなる。このまま元の不自由のない安定した生活に戻って院長として"西名"の名前を大きくしていく事に努めるのが最善なのか。   彼に教えてもらった"強さ""素直" そして"愛"を忘れたくないし忘れなれないんだ。  「言いたきゃ親父にでも言えば?それかここにいる全員に大声で叫ぶとか」  「廉。冷静になれよ。こんな事で今までの努力を無駄にするな」  「こんな事?」  スマホを兄の胸に押し当てて視線をしっかり合わせた。  「きっとこの先も兄貴のようにはなれないと思う。だけどそれでいいと思ってるし後悔するよりはいい、、こんな弟でごめん。彼はもう患者じゃない。僕に特別な大事な人だよ」  「おいっ!、、行くな」  思い切りトイレのドアを開けて走って出て行った。もうどうにでもなれと言う思いと純粋に彼に会いたい気持ちが混合していた。 廊下にいる参加者達にも見向きもせず一直線にホテル前に止まったタクシーに飛び乗った。 行き先を告げてすぐに発車したタクシーを追う人はいない。   心なしか気持ちはすがすがしくてとても軽く解放されていた。タクシーの中で彼に電話をするとすぐに出る。  「琉加くん、遅くなったけど今向かってるから。それからー…今日は朝まで一緒にいられる?」  そう彼に素直に伝えた。子どもの頃から何一つ自分の意志で物事を決める事なんてなくて用意されて周りの望む事に従ってずっといい子でいた。 恥ずかしながらこの歳で初めて"反抗"と言う名の自分の意志を示した。  遅れてきた反抗期は意外にも心地悪く無いものと言う事も知った。

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