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第11話

 透たちは、フードコートとは別にある大手チェーンのハンバーガーショップに入った。平日の遅い時間なので、客はまばらだ。  とりあえず席を確保し、聖のオーダーを尋ねる。 「俺、買ってくるわ」  爽汰が席を立ってカウンターに向かったので、しばらく二人きりになった。 「なんか、個性的なメンツでごめんな。悪い奴らじゃないんだけどさ」  その言葉に、聖はふるふると首を横に振った。そのまま携帯になにやら入力し始める。  いいひとたちだと思う  お世辞ではなく、本当にそう思っているのが表情でわかる。  真剣な顔でみつめられているのに、透は微笑ましい気持ちになった。 「まぁ、バンドに加入するかはまた別問題だから。二、三日ゆっくり考えてよ」  聖はこくりと頷く。 「お待たせ~」  爽汰が大量の品物を載せたトレイを運んできた。 「ちょ、どんだけ頼んだんだよ!?」 「いやぁ、エキサイトしたら腹が減ってさぁ。足りなかったらどんどん追加するから! あ、当然ワリカンな」  今の量ですら完食できるか怪しいのに、爽汰はとんでもないことを言い放つ。  ともかく、買ってしまったものは仕方がない。透は覚悟を決めてハンバーガーを手に取った。 「それでさ。話っていうのは」  爽汰が唐突に切り出す。二人とも口いっぱいに食べ物を頬張っているので、とりあえず彼の顔を見た。 「明日のテレビ出演、藤原くんにも出てもらったらどうかな、って」 「ふぁ!?」  予想していた話から斜め上のことを言われて、透は思わず変な声を出してしまう。 「ほら、藤原くん超美人だからさ。テレビ出たらメチャクチャ話題になると思うんだよね」  瞳をキラキラ輝かせながら語る爽汰。どうやら冗談のつもりではないらしい。 「え、話ってそれ!?」 「そうだけど。俺なんかおかしなこと言ってる?」  てっきり、聖の加入に対して難色を示されるものだと思っていた。  透は気が抜けてしまい、大きく息を吐きながら椅子の背もたれに身体を預ける。  さすがはウチのへっぽこリーダーだわ……展開が予想外すぎ。 「だいたい根岸くんって、藤原くんの加入については保留したいって言ってなかったっけ」 「それはアレだよ、メンバーへのサプライズっていうかさ。テレビで新メンバーお披露目! ってカッコ良くない!?」  興奮して声が大きくなっている爽汰は、周囲から注目されているのにも気付いていない。 「とりあえず落ち着け。そもそも、サプライズになってないし……根岸くん以外はみんな賛成してたんだから」 「でも藤原くんの返事は聞いてないわけだからさ」  その言葉に、思わず聖の顔を見る。なぜか透は、断られる可能性を心配していなかった。 「仮に加入を決めてくれたとしても、いきなり明日テレビに出ろっていうのは……」  それまで二人の話を聞きながらもぐもぐと口を動かしていた聖は、食べ終わって携帯を手に取った。  顔は出したくない 「ほら」  爽汰にも入力された画面を見せる。すると、意外にもそれは当然といった感じで頷いた。 「そこで、だ。藤原くんには、女形として出てもらうっていうのはどう?」  透は絶句した。隣の聖はといえば、ぽかんと口を開けたまま固まっていた。

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